十角館の殺人(じゅっかくかんのさつじん)

ご紹介

館シリーズで有名な綾辻行人さんのデビュー作をご紹介します。
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷あおやしきで焼死したという。やがて学生達を襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!1987年刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作。
小説ならではの結末に納得してもらえると思います。ぜひ読んでもらいたい本です。

話の内容

とある大学のミステリ同好会のメンバー6人が漁船に乗せてもらい、無人島へ向かう。潮の流れが早いため他の漁船も立ち寄ることのない「青屋敷」と呼ばれる建物がある孤島である。
メンバーはエラリイ、カー、ルルウ、ポウの男4人とアガサ、オルツィの女2人。名前はそれぞれミステリ小説家の名前に由来したニックネームで呼び合っている。
漁師は6人を島に降し、1週間後に迎えに来ると去っていく。

島に唯一ある館に着くと7人目のメンバーである男ヴァンが出迎える。十角館じゅっかくかんに足を踏み入れると十面の壁に囲まれた十角形の中央のホールあった。壁一つずつに扉があり、玄関・バストイレ・キッチン・残り7つが部屋という造りだ。7人は部屋割りを決めると早速島の散策に向かった。
北に向かうと青屋敷の焼け跡があった。青屋敷は以前火事で全焼し、焼け跡から主人の中村青司、妻の和枝、使用人夫婦の4人が死体で発見された。
4人の死体からは睡眠薬が検出され、主人は灯油をかけられ焼死、妻は首を絞められ窒息死、使用人二人はロープで縛られ頭を叩き割られていた。また、妻の死体からは左の手首が切り取られおり焼け跡のどこからも発見されなかった。
その中で、事件の何日か前から泊まりで来ていた庭師だけが島のどこにも見当たらず消息不明になっていたという事件があった。

名探偵むぎ
名探偵むぎ

犯人は捕まってないのか。謎だな。

きなこ
きなこ

怖いですね…。幽霊とか出てきそうですぅ

一方その頃、本土にいる江南孝明かわみなみたかあきに「お前達が殺した千織ちおりは私の娘だった」という手紙が死んでいるはずの中村青司から届いていた。差出人に記憶はなかったが、千織というのは1年前のサークルの新年会でアルコール中毒からの心臓発作で急死した中村千織だと気付いた。
葬儀の場に父親の姿はなかったようだが、なぜ今頃こんな手紙を送ってきたのか。江南は新年会に参加していたメンバーに同じような手紙が届いてないか連絡をしたが、確認は取れなかった。

気になった江南は当時の連絡簿を調べ、千織の父が角島で死んだ中村青司であると確認し、叔父である中村紅次郎を訪ねることにした。
そこで変な手紙が届いたと伝えると、紅次郎にも青司から手紙が届いているという。内容は「千織は殺されたのだ。」それだけが書かれていた。紅次郎の家には島田というミステリ好きの男が遊びに来ており、詳しく話を聞かせてほしいと江南と一緒に謎の解明に乗り出した。
江南は島田に事の経緯を説明する。新年会の参加者は角島にいるメンバーと江南、守須、千織だった。江南と守須は1次会で帰ったのだが、残るメンバーは3次会まで飲んでいたらしい。その3次会で千織は死んだのだった。酒に弱い千織を無理に参加させた事で死なせてしまった。だから殺してしまったと言われても仕方ないのかも知れないと話すのだった。
守須はバイクで絵を描きに出かけていたが、帰ってきてみると青司から手紙が届いていた。そこに江南から連絡が入り島田を連れて訪ねると伝え、3人での謎解きが始まる。

名探偵むぎ
名探偵むぎ

死んだはずの青司からの手紙・・・か

きなこ
きなこ

なんかドキドキしてきたです!!

島に上陸してから2日目の朝、十角館のメンバーが起き出してくると、中央ホールのテーブルの上にプラスチックのカードが置かれていた。
カードには第1の被害者、第2の被害者、第3の被害者、第4の被害者、最後の被害者、探偵、犯人の7枚のカードだ。メンバーは誰のイタズラだと聞くも皆、自分ではないと言う。趣味の悪いイタズラだということになり、それぞれが思い思いに過ごすこととなった。

一方、本土では江南が手紙が他のメンバーに送付されてるか確認して、午後から島田と合流し庭師の自宅を訪ねることにした。守須は花が咲く前に絵を描き上げてしまいたいということで一緒には行動せず、情報を集めたら守須の自宅に集合し、3人で事件について考えるという計画になった。
江南は他メンバーにも手紙が届いていることを確認し、島田と合流した。庭師の家には妻がおり、詳しく話を聞くことができた。
その後、守須の家に集まり情報を整理していく。情報から島田は紅次郎と和枝の仲があやしいのではないかと推測する。守須は青司が生きており、死んだとされた青司は実は庭師なのではないかと推測する。ただ、プライベートに踏み込みすぎる内容の為、守須はここからは謎解きから離脱すると言った。

名探偵むぎ
名探偵むぎ

なるほどな・・・。犯人はあいつだな!!

きなこ
きなこ

え!?もうわかったんですか!!
さすがです!!

名探偵むぎ
名探偵むぎ

ここからは話がどんどん進んでいく。
気になったら先に本を読んでからにした方がいいぞ。

3日目の朝、アガサが起きてきて、オルツィの扉を見ると「第1の被害者」のプレートが貼られていた。みんなを起こして、オルツィの部屋を入るとベッドの上で絞殺されていた。窓もドアも鍵はかかっていなかった。そして、オルツィの左手が切り取られていたのだった。
残った6人のメンバーは犯人は誰だと疑心暗鬼になり、とりあえず落ち着こうということでコーヒーを飲むこのにした。アガサがコーヒーを入れ、十角形のテーブルに十角形のカップを置くと皆が自由にカップをとっていく。そんな中、カーが苦しみだした。
毒が仕込まれていたのだった。とりあえずカーを部屋に運び、ベッドに寝かせていたが深夜に亡くなってしまった。
次に誰が殺されるのか。皆で一緒にいた方がいいと意見があるも殺人犯と一緒にはいられないと各自部屋に鍵をかけて寝ることとした。

一方、江南は島田と二人で角島の噂を調べてみようと島の見える港に行くことにした。そこではミステリ同好会を島まで漁船に乗せたという人物に会うことができた。
漁船の人が言うには、誰もいないのに島に灯りがつくことがあるとかボートで近いた人が転覆したことがあると言ったものであった。ただ、転覆したボートの人は普通に助けられたし、灯りも見間違いであると青司の幽霊ということはないと言っていた。
島田はあの島に行く方法はないかと尋ねると、この港からか、向こうに見える岬からなら島にボート出していけないこともないとのことだった。

名探偵むぎ
名探偵むぎ

(ぎゃ〜!!)殺された・・・だと?

きなこ
きなこ

え?名探偵むぎさん。犯人わかってたんですよね?
(疑)ちょっと自分、先に本読んできます!!

4日目の朝、起きてきたメンバーが浴槽でカーの左手を発見する。メンバー達はなんとか外部と連絡を取ろうと島の入江や岩場に別れて向かう。そんな中、青屋敷の焼け跡からエラリィが地下室を発見する。
そこには誰かがいたような形跡があり、中村青司が生きて自分たちを狙っているのでは?と疑い始める。結局、外部との連絡を取れる手段は見つけられず、館に戻りこの殺人について考えることになった。
内部に犯人がいる、中村青司の外部犯人説など意見が分かれる。お互いの部屋を確認しようというも犯人が部屋に入ったら何か仕掛けられるかも知れないと拒否する者もいて疑心暗鬼でどうにも意見がまとまらないメンバーはそれぞれ戸締りをし眠りにつくこととした。

一方、本土では島田と江南が紅次郎を再び訪ねることにした。
島田は紅次郎に千織の父親はお前ではないか?と問い詰める。紅次郎は観念して真相を話し始める。
千織は紅次郎と和枝の間にできた子供である。青司は勘づいているのか千織を可愛がることはなかった。和枝を愛していた青司は自分だけのものにするため、和枝を殺し、紅次郎に左手を送り付けたのだった。そして、事実を知る島の人も殺害し、青司自身も自殺をしたのだと。そう、これは無理心中だった。
江南が家に帰ると経過が気になって仕方がなかった守須が訪ねてきた。事の流れを説明し、青屋敷の事件の真相を得たのだった。
皆に届いた手紙については、島からメンバーが戻ってきたら尋ねることにし、調査を終了した。

名探偵むぎ
名探偵むぎ

えっと・・・ん〜〜、どうなるんだ?
めっちゃ気になるわぁ

5日目、ルルウは夢現ゆめうつつの中で次々と浮かんでくる島に来てからの出来事を考えていた。殺されたオルツィ、カー、島の風景、中村青司。そして中村千織の存在を思い出すのだった。島の探索をしていた時から引っかかっていた風景を確かめる為に館を抜け出していく。
その後、アガサが目覚めホールに出る。まだ誰も起き出していない。顔を洗おうと洗面所に向かう。顔色の悪さからいつもより明るい色の口紅を選びメイクをしていく。
しばらくしてヴァンが起きてくる。洗面所に向かうとアガサが倒れていた。吐き気を堪えながらポウを起こすとポウは大きな声でエラリィとルルウを呼び、洗面所に向かう。
ポウの声で目覚めたエラリィは急いで洗面所に向かう。アガサは既に死んでいた。その場にルルウがいないことに気づき、ルルウの部屋の扉を見ると第3の被害者のプレートが貼り付けてあった。
3人は慌ててルルウを探しに出ると、撲殺されたルルウを見つけるのだった。

3人はルルウとアガサを部屋に寝かせた後、ホールのテーブルにそれぞれ離れて座った。ポウは落ち着くためにタバコを取り出す。エラリィにも勧め、ヴァンも一本貰い3人でタバコを吸い始める。エラリィが話し始める。ルルウの殺害現場には館に戻ることなく岩場に続いていた足跡があったのだ。その事とおそらく中村千織が青司の娘であることから外部犯、中村青司が怪しいと推理する。この館には隠し部屋があり、そこに潜んで自分達を狙っているのだと。
ポウはもう一本タバコに火をつけ吸い始めると、急に苦しみ始めた。2人の目の前で殺されたのだ。
エラリィとヴァンは青司を見つけようとし、台所にある隠し通路を発見した。暗い通路を通っていくと半ば白骨化した死体を発見するのだった。
そして深夜、十角館に火の手が上がった。その炎は本土からも見えるほどだった。

きなこ
きなこ

名探偵むぎさん!!
一体これはどうなっているんですか?!
は、犯人は誰なんですか?!

6日目、守須は電話のベルで起こされる。寝ぼけながら出ると、十角館が炎上したと言われたのだ。守須は江南に連絡をし、館が炎上して全員死亡したと告げる。島田にも連絡をして現地で落ち合うことになった。現地に行くと警察から1人を除き、殺害されてた。その1人、自殺と思われる人物はエラリィだという。守須と江南は性格的に見てエラリィが自殺なんて信じられないと伝える。島田は紅次郎がやったのではないかと考える。
ふと、島田はエラリィという名前を聞いて不思議に思い2人に尋ねる。江南はニックネームですよと答えると、へぇと面白そうに聞いてきた。二人はなんて呼ばれていたのか?
江南は「恥ずかしながら、ドイルです。」と答える。じゃぁ、守須君はモーリス・ルブランあたりかなと伝えると、「いいえ」と呟くと寂しげな微笑を浮かべて答えた。
「ヴァン・ダインです。」

名探偵むぎ
名探偵むぎ

やっぱりな!!!!!

きなこ
きなこ

う、嘘でしょ〜〜〜〜〜!!

解決編

守須はヴァンだった。
ヴァンは中村千織と誰にも内緒で付き合っていた。千織は同好会のメンバーに殺されたのだと復讐を計画したのだった。
島には6人だけが泊まっていると見える様に細心の注意をした。船には一緒に乗らず、部屋は使用できなくなった部屋を選び、水分を断ち軽い熱中症を起こして早めに部屋にこもれるようにした。
本土では、江南と推理を行うことで守須(ヴァン)のアリバイを作る。絵を描きにくと告げて昼はバイクで島近くの岬に向かい島へ上陸し6人と一緒に行動しながら計画の準備を進める。夜になると本土に戻り、江南と合流して、ある程度推理をした後には調査から離脱し、島での復讐に専念する。
手紙は千織が殺されたという事実を知らせる為に準備した。事故ではない、あくまであの6人に殺されたのだと。

まずはオルツィを絞殺する。遺体を整えている時に左手の指輪に気が付いた。そこにはヴァンが千織に贈った指輪だった。ヴァンはそのままにしておけず左手を切り取り持ち去った。指輪の裏にはヴァンと千織のイニシャルが掘り込まれていたからだ。思いかけず、中村青司の仕業のように見せかけることもできた。
オルツィを殺す前日には、殺害予告とも取れるプレートがあったものの警戒心がそこまでなかった為、叔父から預かったマスターキーを使って、アガサの口紅に毒を仕込む。オルツィと前後して殺害する予定だったが、2本あったのには気づかなかったため遅れて死ぬこととなった。
次にカーを殺害。コーヒーカップには1つだけ十一角形のカップがあったのだ。十角形に囲まれたこの館では館では違和感なく溶け込んでいたのだった。死ぬのは残ったメンバーの誰でもよかったのだ。
オルツィの左手だけだと不自然なので、カーの左手も切り取った。
そんな中、ルルウが岩場に隠しておいたボートに気が付いて探しにきたのは誤算だった。慌てて撲殺したが、いつ館のメンバーが叫び声に気づいて駆けつけるか分からなかったので、急いでその場を離れ、岩場から入江に船を回して館に戻った。足跡がついていることには気づかなかったが、エラリィが外部犯中村青司の仕業だと言ったため助かった。
残る3人になると、青司が犯人の線が有力視された。タバコを貰う際に毒入りのタバコを入れてポウに戻した。ポウが殺されてもエラリィは青司が犯人であると疑わなかった。
油断しているエラリィに睡眠薬入りのコーヒーを渡し、寝入った所で灯油をかけて火を放った。
ヴァンはボートで本土に戻り、館全焼の連絡を待つのであった。

全てが終わり、海を眺めながら千織を思い出していた。そこに島田がやってきた。島田は事件の真相を話し出す。しかし、証拠は何もないのだ、何も。
海を眺めていると手紙の入った瓶が流れてくる。最後の審判が下される・・・

感想

とてもとっても面白い小説です。犯人は最後まで分かりませんでした。伏線も気づかないうちに盛り込まれており、二転三転していく話のテンポも素晴らしい。
犯人がわかった上で読んでも、あぁここのこれが!!、あーそういことね!!と楽しめます。
ミステリー小説を読むと、「こんなの言ってなかった」とか「ありえないトリック」、「普通じゃ無理」みたいな設定があるあるなのですが、無駄のない綺麗に収まっていて感動です。
ミステリで一個おすすめを教えてと言われたら、まずはこの小説をおすすめします。

初めてのブログでうまく内容を伝えられてない、もっと面白いのにと伝えることの難しさを痛感しました。でも、このブログを読んで一人でも面白さを伝えられたらなと思います。

名探偵むぎ
名探偵むぎ

ここまで読んでくれてありがとうございます

コメント

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